「画像診断は医療行為」とすることと遠隔画像診断との不整合

医師法第17条 に「医師でなければ、医業をなしてはならない。」との記載があります。医師法第17条に規定する「医業」とは、「当該行為を行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為『医(療)行為』を、反復継続する意思をもって行うこと」であるとされています。

遠隔画像診断ガイドラインにおいては、この医師法第17条を根拠に外国(中国)への読影の委託の違法性につき厳しく指摘しています。

遠隔画像診断ガイドライン2018の註から引用します。

註1:医療行為の定義

本文中の「医療行為」とは疾患の診断および治療のための行為全般を意味する。診断の検査手技自体は非侵襲的な場合でも、その結果として侵襲的な治療が必要になる可能性があるため、平成17年7月26日 厚生労働省医政局長通知にある「医師の医学的判断および技術もってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為」に含まれ、医師法に記載されている「医行為」にあたるとの解釈に基づいている。

註2:外国人医師も含めた日本の医師免許を持たない者の日本国内での医療行為について医師でない者が画像診断を行った場合は、医師でない者が「医業」をなしたものとして医師法17条、同31条1項1号によって3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処せられる。米国放射線専門医会の「米国外における画像診断についての宣言(改訂版)」においても、国外において画像の遠隔診断を行う医師に米国の医師資格を要求している。医師法17条には国外犯規定はないが、医師でない者の国外における画像診断を国内の者が加功(加担)した場合は共同正犯(刑法60条)として処罰される。また、医師でない者の画像診断に対して医師が加功した場合も、共同正犯が成立するというのが裁判例である。

それでは日本の医籍に登録された医師であれば、どのような形でも医業を行って良いのでしょうか。医師個人が医業をおこなうのみならず、法人でも医業を行っているとみなされます。医師法では医師でなければ医業をなしてはならないとされていますが、医療法により許可を受けることで医師個人ではなく法人が主体となって医療機関を開設して医師に医業を行わせ、医療行為を法人の事業として実施することができると考えられます。

医療法 第1条2の2において、「病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)(略)において、(略)提供されなければならない。」とされ、医療の提供は医療提供施設に限られます。また、法人が病院、診療所を開設する場合には厳しく非営利性が求められています。

実施されれた行為が医療行為にあたる内容であれば、診療所等の医療機関(医療提供施設)で行われなければ違法となり、実際に行為を行ったものが医師であったとしても、違法になる可能性がありうるとされます。もちろんこれは患者への直接的侵襲を伴うような医療行為を念頭に置いてと思われますが、自宅での家族への投薬や注射が、自宅が診療所として届け出されていないとして違法とされた事例もあります。画像診断が医療行為とするならば、厳密には自宅遠隔読影ふくめ病院や診療所外での画像診断は違法ということになります。

さらに、画像診断という医療行為が外部委託され、その外部委託先が医療機関でなく、株式会社などの営利企業もありうるという、現在の遠隔画像診断支援サービスは、日本の医療制度にとっては受け入れられないものとなる可能性があります。その遠隔画像診断支援サービスを大学ぐるみで大規模に行っているのが現状です。

つまり遠隔画像診断ガイドラインでは画像診断を医療行為と明確にすることにより、国外への読影の委託に警告を発する形となりましたが、その一方で、国内で行われている遠隔画像診断の大部分である、商用の遠隔画像診断支援サービス(大学医局などが主体となったNPO法人、株式会社などでの読影を含む)との間に不整合、問題点を生じさせることになりました。

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