クラウド型遠隔画像診断システムの登場 2007年〜

遠隔画像診断を支えるネットワークは、2000年代中頃までに光ファイバとVPNによる高速アクセス回線が安価に利用で来るようになりましたが、遠隔画像診断そのものシステムは、ホスピネット(セコム)やドクターネットなどの大手は自社開発のシステムを有し比較的コストがかかるものでした。

その他の多くの企業や独立放射科医は既存のPACSやレポートを組み合わせ、一部に自社開発ソフトウエアを組み合わせて運営を行っていました。これらのシステムは多くは自社内に設置しオンプレミスとして運用を行っています。

イメージ・コミュニケーション(株)においても、(株)フィリップス・ジャパンと共同して、フィリップス社PACSとフィリップス社と共同開発した遠隔画像診断対応レポーティングシステム、遠隔画像診断依頼システムは(株)ファインデックス(当初は(株)トライフォー)に開発を依頼し、これらを組み合わせて自社オリジナルの遠隔画像診断システムを構築しました。

このような遠隔画像診断システムは、開発コストや維持管理コストが比較的かかるため、一人あるいは少人数で遠隔画像診断を受託しているような場合は設置が困難で、送信元病院のPACS・レポートシステムをそのまま自宅に設置する、あるいは比較的安価なのPACSソフトウエアに、ファイルメーカーで自作したレポートを組み合わせるなどの方法がとられてきました。

そのような中で、医療以外のITシステムににおいて、ASP(Application Service Provider)あるいはSaaS(Software as a Service)といった用語が一般化するようになります。ASPもSaaSも、インターネット(およびVPN)を通じてソフトウェアを利用することを指し、サーバがインターネットなどで接続されたデータセンターに設置されることから、クラウドサービスと総称される場合もあります。

従来主流であった自社内にハードウェアやネットワーク機器を設置した上で、オリジナルのシステムを開発して稼働させるオンプレミス型に比べて、これらクラウドサービスは「初期費用が安い」「サービスをすぐにスタートさせることができる」「メンテナンスに手間がかからない」などのメリットがあります。

このトレンドが遠隔画像診断業界にも到来して、クラウド型の遠隔画像診断システムをASPとして提供する会社が現れます。その代表が、2007(平成19)年に設立された医知悟LLC、2008(平成20)年に設立された、イーサイトヘルスケア(株)になります。

医知悟LLCのシステムは依頼側、読影側に小さいサーバを設置し、クラウド上のデータセンタを介して、画像やレポートデータを送受信するシステムです。イーサイトヘルスケア(株)のシステムは、遠隔画像診断システムをクラウド上のデータセンタ内のサーバ上で仮想化し、画像情報のみを転送するVDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ基盤)を用いたシステムです。

このようなシステムが開発されたことにより、より多くの読影医が大きな設備投資なしで、自宅等で読影することが可能となり、病院勤務と遠隔画像診断の副業といったスタイルも急速に普及します。

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