現状と問題点

多くの遠隔画像診断支援サービスは主治医(=検査依頼医)に対する診療・診断の支援≒「コンサルテーション」であり、最終的な診断は対面診療を行っている主治医であるという解釈です。よって検体検査会社に依頼する病理検査とそのレポートと同じように、遠隔画像診断支援サービスを利用することに問題はありません。

ただ、遠隔画像診断支援サービスの急速な普及に制度面が追いついていない実情があり、特に遠隔画像診断ガイドラインで述べられたように、現在の遠隔画像診断支援サービスも含めたすべての画像診断を医療行為と単純に解釈した場合には、既存の制度との不整合、問題点が生じます。

また、遠隔画像診断支援サービス事業者を管理監督し認証する様なシステムが存在しないため、質の担保という点でも問題があります。画像診断管理加算の施設基準に外部への委託禁止が盛り込まれた原因の一つは、画像診断管理加算を取得する医療機関が読影を外部に委託することは適切でないという点に加えて、外部の委託機関がどんな質のものかも担保できていないことも問題になりました。このことからも、遠隔画像診断支援サービスが既存の医療の枠組みの中にしっかりと組み込まれるためには、質を担保するような仕組み作り(組織による認証制度など)も必要と考えます。

遠隔画像診断がここまで拡大し、医療において欠かすことの出来ないインフラになった現在、よりよい遠隔画像診断をめざし、遠隔画像診断がさらに医療に貢献していくためには、これらの不整合や問題点を議論して解決する必要に迫られていると思います。

まずは、不整合、問題点を理解するためポイントとなる項目ごとに解説していきたいと考えます。なお、前提としてこれからのテーマは、医療とくに保険診療と関係する場合を念頭にしています。

  1. 遠隔画像診断における契約 1
  2. 遠隔画像診断における契約 2
  3. 画像診断の外部への委託について
  4. 画像診断と医療行為
  5. 「画像診断は医療行為」とすることと遠隔画像診断との不整合
  6. 大学医局がNPO法人や株式会社の設立を選んだ理由
  7. 病理における外部委託 1
  8. 病理における外部委託 2
  9. 病理における外部委託 3
  10. 遠隔画像診断が病理検査・病理診断に学ぶべき点
  11. 2014年の画像診断管理加算の施設基準の変更の背景
  12. 「遠隔読影マッチングサービス事業」について
  13. 遠隔画像診断が商用サービスとして行われた弊害
  14. 現状と問題点のまとめ

注:画像診断という行為自体には、保険診療であろうが非保険診療(検診や自由診療)であろうが行っていることに区別がありませんが、国民皆保険の日本においては実施される医療のほとんどは保険診療であり、保険診療の根幹をなす診療報酬制度とのからみで色々な問題が生じるからです。ですので、非保険診療(検診や自由診療)を遠隔画像診断で行うことに関しては、厳密な法律論の観点からは異なるかもしれませんが、実際は大きな問題が生じていないのが実情です。

        次へ>

タイトルとURLをコピーしました