歴史と技術のまとめ

遠隔画像診断はブロードバンド環境の普及、医用画像のデジタル化とフォーマットの統一、CT、MRIを中心とした画像診断装置の普及と高度化といった技術的ブレークスルーと、画像診断の専門医による読影の需要増加といった複数の要因が合わさり、21世紀に入り急速に普及しました。

遠隔画像診断は当初、主に放射線科医のいない施設の主治医の診療・診断のサポートでしたが、特に大学医局の遠隔画像診断参入後は、主治医だけでなく常勤放射線科医のサポートも含め、医療における欠かせないインフラとして認知されたと思います。

さらに今後は遠隔画像診断と親和性の高いAIの導入により、よりスピーディーに精度の高い画像診断がより効率的に提供できることは確実であり、実臨床のみならず予防医学の領域においても、遠隔画像診断の重要性はさらに高まると考えられます。

ただ、技術面ではなく制度面から遠隔画像診断を考えた場合は、クリアすべきハードルは高いと言わざるを得ません。その理由の一つは、遠隔画像診断が日本の医療や診療報酬の枠組みの中でどのような位置にあり、医療機関である病院や診療所とどのような関係であるかが、はっきりと定まっていないためと考えています。また遠隔画像診断ガイドラインが、主たる目的として外国医師による読影を除外するために、画像診断が医療行為と宣言したことによりより、さらに状況を複雑にしたとも言えるでしょう。

遠隔画像診断支援サービスは当初から主治医への診療・読影支援という形で、一般企業による商用サービスという診療報酬の枠組外で主に発展し、私の所属する会社も含め大学医局が遠隔画像診断に参入する際にもその多くが同様の道を選んだ(そうせざるを得なかった)ためです。

また商用サービスであるが故に、ごく少数とは思いますが当初の理念から逸脱した営利を主目的とする企業の参入を許し、それも一因となって画像管理加算の施設基準の変更が行われることとなります。それにより遠隔画像診断の大きな目的の一つである、病院の常勤放射線科医のサポートを不可能にし、逆に常勤医を苦しめることになってしまいました。

遠隔画像診断は医学放射線学会の見解にもあるように、「遠隔画像診断は圧倒的に不足している画像診断医の読影業務を補完して医療の質向上に貢献しており」本来ならば、常勤放射線科医のサポートとしても正式に認められるべきと考えています。

将来のよりよい遠隔画像診断の普及への道筋を考えたときに、いままで説明したような歴史的な背景の理解に加え、現在の遠隔画像診断の制度面の様々な問題を共有し、議論し解決していくことが必要ですが、その情報を得る場や、議論のたたき台となる知識や認識も共有できていないのが現状です。

そこで、別項では今後のよりよい遠隔画像診断のために何が問題なのか明らかにし、私見としての提言も発信していきたいと考えています。

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