1989(平成元)年に病理診断が医療行為と認められてから、病理診断科が標榜科として認められるのに20年かかりました。そして、2013年に日本病理学会は「国民のためのよりよい病理診断に向けた行動指針 2013」を発表します。
病理診断体制の環境整備
平成元年に厚生労働省から「病理診断は医行為である」との疑義解釈があり、平成 20 年には「病理診断科」が診療標榜科として認められ、「すべての病理診断を医療機関内で行うことを目指す」とされている。しかしながら、現在も、病理組織検体の約 7 割が大学病理学講座あるいは登録衛生検査所などの非医療機関内で行われていることから、病理診断の体制を見直すことが急務である。これらの施設での病理診断を「医療機関内での病理診断」に移行するには、診断体制の整備、診療報酬上のサポートおよび病理診断精度管理に加えて、医療法や医療法施行規則の改正をも視野に入れる必要があり、抜本的な対策を求めていく。
つまり非医療機関で行われている病理検査(=実質的には病理検査に加えて病理診断)の体制を見直し、医療機関内の病理診断に移行することを目標としています。
2015年の「国民のためのよりよい病理診断に向けた行動指針 2015」で、さらにこのように記載されています。衛生検査所での「病理検査報告書」を「医行為」でないと明確にしています。
現在も、病理組織検体の約7 割が登録衛生検査所、大学病理学講座などの非医療機関内で処理され、医行為ではない「病理検査報告書」として臨床医のもとに届いており、国民に病理診断を確実に提供するものとはなっていない。このような病理診断の体制を見直すことが急務である。
2017年の「国民のためのよりよい病理診断に向けた行動指針 2017」ではさらに踏み込んだ表現となっています。
「検査報告書」は前述の通り、非医療機関で作成されるため参考意見にとどまり、医行為である「診断書」として担保されない(安全面が危惧される)。そのため、非医療機関での参考意見「検査報告書」を「医療機関内での病理診断」に移行するため、診断体制の整備、診療報酬上のサポートおよび病理診断精度管理に加えて、医療法や医療法施行規則等関係法案の改正をも視野に入れる必要がある。
つまり、衛生検査所で行われる病理検査とそれに付随する参考意見としてのレポート(病理検査報告書)の存在を現状では認めつつも、病院や診療所で行われる医療行為である「病理診断」への移行を明確にし、「すべての病理診断を医療機関内で行うことを目指す」と宣言しています。
*日本病理学会は「すべての病理診断を医療機関内で行うことを目指す」ための具体的な方策についても、「国民のためのよりよい病理診断に向けた行動指針」に記載されています。興味があれば是非お読みください。画像診断も参考になるところは大きく、別項やブログで紹介したいと思います。
*病理についての詳細については、興味がある方は下記サイトもご覧ください。
・ブログ:病理診断科を開業しました。
・ブログ:病理医ぱそ太郎の病理と日常
・ホームページ:病理診断と病理検査のはざまで