遠隔画像診断とは ~このサイトを立ち上げるにあたって~
遠隔画像診断とはその名の通り、CTやMRIあるいは単純X検査等の画像検査が実施された場所から、別の場所(遠隔地)の読影医のもとに様々なネットワーク、通信方法を用いてその医用画像を電送して、遠隔地にて画像診断をおこない、その結果をネットワークにて返却するものです。
日本放射線科専門医会・医会遠隔画像診断ワーキンググループ及び日本医学放射線学会電子情報委員会が共同でとりまとめた、「遠隔画像診断に関するガイドライン 2018」においては、遠隔画像診断とは「CT, MRI 等の医用画像およびその関連情報を、ネットワークを利用して画像検査を施行した医療施設の外で複数施設の医師(主治医と専門医、専門医同士)が相互伝達することで行われる診断」と定義しています。
画像診断の専門医が不在の施設においては、いままで主治医のみで診断していた医用画像を遠隔画像診断を利用して専門医の元に送信し、専門医の診断を参照することが可能になり、医療の質の向上に寄与することが期待されます。また画像診断の専門医が在籍していても、画像診断そのものが細分化・専門化してきていることから、主治医や画像診断専門医自身がより専門の医師の診断を仰いだり、画像診断専門医が不在の時(夜間や休日、休暇中)でも、遠隔画像診断を利用することにより専門医の診断を得ることが可能になります。
この説明だけを見れば次世代の夢のような医療技術の一つで、実際に遠隔画像診断は急速に普及してきていますが、実は様々な問題点を残したまま発展してきました。ある意味致し方ないことではありますが、日本の医療体制や診療報酬体系における遠隔画像診断の立ち位置や役割が、サービススタート当時に十分な検討や制度設計されないまま、実サービスとして急速に広まったためです。その背景としては、多大な現場のニーズの増加に加えて、DICOM規格の普及、フィルムレス化、ブロードバンド環境の整備といった、技術的な急速なブレイクスルーが大きく関係しています。21世紀も20年を迎えるにあたり、遠隔画像診断を支える技術の進歩は一段落し、今後遠隔画像診断が成熟して次の新たなステップに進むには、様々な問題点を明らかにしつつ、その問題点を一つずつクリアしていくことが必要と考えています。
先程ご紹介した、「遠隔画像診断に関するガイドライン 2018」においても、日本の医療体制や診療報酬体系における遠隔画像診断の問題点や将来への提言に関しての記載はありません。また、このような遠隔画像診断の様々な問題点を、検討したり明らかにしている組織はもとより個人もほとんど無く、そのようなホームページやサイト、ブログ等も見当たりません。
そこで、遠隔画像診断の黎明期より関わってきた経験と知識をもとにして、遠隔画像診断の歴史や技術的背景、現状と問題点などの情報発信に加え、遠隔画像診断への今後の提言など、皆さんに情報発信できる場としてこのサイトを開設いたしました。また、遠隔画像診断を中心として起業(開業)したいと考えている若手の医師のための情報提供も行いたいと考えています。
それでは「歴史と技術背景」のページからご覧ください。
注1:画像診断医(放射線科医、放射線診断専門医など)の医療における役割や重要性などについてはここでは述べません。IVRや放射線治療含めた放射線科医についての基本的な知識なども含め、日本医学放射線学会や日本放射線科専門医会・医会、各大学医局のホームページなどを参照してください。
注2:画像診断は各医療機関に所属し勤務する主治医と画像診断医のダブルチェックによっておこなわれるのが原則であり、遠隔画像診断がそれより優れていること、劣っていることなどを訴えるものではないことを明確にしておきます。
注4:プロフィールでも述べていますが、このホームページ及びブログは、私の個人的意見や見解を述べたものであり、所属する組織の意見や見解を代表して述べたものではありません。
注5:時間が無い方は太字だけを追っかけていただければ概略が理解できるようになっています。
注6:本HPを引用するのに許可はいりませんが、出典としてこのHPのURLを明記してください。