2014(平成26)年診療報酬改定における、画像診断管理加算の施設基準の変更

2013(平成25)年12月11日の中医協の場で画像診断管理加算がテーマになり、次のような課題が提示されました。

・画像診断管理加算は、臨床診断の基礎となる画像診断報告の質を確保するための体制を整備した医療機関を評価するために設けられているが、外部の機関に画像の読影及び報告書の作成を委託して加算を算定している事例が指摘されている。
・遠隔画像診断における画像診断管理加算の算定については、画像診断管理加算1又は画像診断管理加算2に関する施設基準を満たす特定機能病院、臨床研修指定病院、へき地医療拠点病院、へき地中核病院又はへき地医療支援病院に限って評価を行っているが、画像診断を行う外部の機関を介して遠隔画像診断を行った場合に算定している事例が指摘されている。

つまり、佐藤俊彦先生の「画像診断管理加算2取得と病院経営」と論文の内容そのものが、不適切と指摘されたということになります。

そして、課題の論点として以下のように提案されました。

・自施設における画像診断に係る体制を評価している画像診断管理加算及び遠隔画像診断における画像診断管理加算の算定について、画像の読影等を行う外部の機関を利用した場合は、評価の対象としないこととしてはどうか。

支払い側、診療側から反対意見はなく了承され、2014年の診療報酬改定に、画像診断管理加算の施設基準に外部委託の禁止が盛り込まれることになります。これにより遠隔画像診断の急速な拡大に一旦ブレーキがかかることになります。

このような指摘に至った背景には、一部の遠隔画像診断支援サービス業者が、遠隔画像診断支援サービスを利用することで、画像診断管理加算が取得・維持出来ることを売り文句として契約を取り、病院常勤放射線科医が本来は遠隔画像診断で行われた1次読影を監修・修正して確定レポートを作成すべきところを、いわゆる「メクラ判」を押して大量に読影を処理して、画像診断管理加算を算定するなどの悪質な事例があったとされています。

その結果、画像診断管理加算1,2の施設基準の中に外部委託の禁止が盛り込まれることになります。

それに対して、一般社団法人遠隔画像診断サービス連合会は、「平成 26 年度診療報酬改定における画像診断管理加算に関する施設基準変更について」と題して、声明を発表し、3月24日に厚生労働大臣政務官宛に要望書を提出します。その一部を引用します。

(施設基準変更の)対象とされた“画像診断管理加算2”は該当施設の常勤放射線科医が全ての画像診断検査に関して“画像診断管理”を行い、その保証として翌診療日以内にその検査の読影結果が報告されることとされています。
したがって、画像診断管理の保証を外部の医療機関や遠隔画像診断サービス事業者に委託して加算を算定することは、本会としても慎むべきと考えております。ところが実際通知された施設基準では、画像診断管理加算1まで「外部に委託していないこと」が要件として加えられていました。画像診断管理加算1は画像診断の物理的な要件(数量や報告速度)を規定するものではなく、放射線診断専門医の絶対数が少ない中で常勤専門医を確保している
ことを主に評価するものと認識しています。画像診断管理加算1を請求している施設では少ない常勤放射線科医が可能な限りの画像診断管理を行いつつ読影報告を行い、数量的に不可能であったり、専門外の読影を外部に委託してきました。
本改定により、外部委託が困難になることはこれらの施設の医療の質の低下を招くものと強く懸念しております。

少し遅れて8月23日に日本医学放射線学会からも見解が発表されます。一部を引用します。(括弧内は筆者追加)

(施設基準)改定の理由として、「自施設の体制を整備するのではなく、施設基準の規定等がない外部の機関に画像の読影および報告書作成を委託することは加算の趣旨に沿ったものとはいえない」との見解が示されています。その背景として、一部の地域での遠隔画像診断を活用した読影体制の取り組みや、画像診断管理加算による収益増加を目的とした一部企業の営業活動が不適切と判断された為ともいわれています。 日本医学放射線学会は、これまで専門医制度と並行して、画像診断管理加算の創設および整備を推進してきました。遠隔画像診断についても、委員会等でその質の確保と有効利用などを検討してきた経緯があり、画像診断管理加算の算定理由の本質からみて、上記のような遠隔画像診断の不適切な利用は学会としても全く容認できないものです。

そして後半では、常勤放射線科医のサポートとしての遠隔画像診断の有用性に言及しています。ただし画像診断管理加算1の不整合についての言及はありません。

一方、遠隔画像診断は圧倒的に不足している画像診断医の読影業務を補完して医療の質向上に貢献しており、僻地医療や救急医療の現場などでは、常勤医が処理しきれない一部の読影に対し、遠隔読影を適切に有効利用している施設も多くみられます。また、難しい症例に対するコンサルテーションにも遠隔画像診断は有効な手段です。画像医療の均てん化、質の向上の観点からも、遠隔画像診断は、医療の中で欠かせないものとなりつつあります。今後、日本医学放射線学会としては、適切な利用方法の推奨、質の担保、不正利用の防止等を含めて、国民から求められる遠隔画像診断を推進していきたいと考えております。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

その後日本医学放射線学会、専門医会・医会、業界団体共に、この問題に対する具体的なアクションはありません。2019(令和元)年9月現在、この施設基準に変更は見られず、画像診断管理加算1および2取得施設においては、遠隔画像診断支援サービスを、実質上受けることができないことが続いています。

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