画像診断と医療行為

先ほど医療行為は外部委託できないと考えられていると述べましたが、医療行為とはどの様な行為を指すのでしょうか。

医療行為(≒医行為)は「医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為」とされます。例えば手術の様な直接に人体を傷つける行為は医療行為として誰もが疑う余地はないでしょう。法律の中に「医療行為とは」という定義はなく、医療行為であるかどうかはそれぞれの判例や、行政の判断で示されてきました。

遠隔画像診断ガイドラインでは、このように記載されています。

(1)画像診断は医療行為である

・画像診断は診断確定に重要な役割を果たし、さらに治療方針決定に大きく関わっている。とくに最近の精密な画像診断情報が診断や治療法の決定に果たす役割はますます大きくなってきている。画像診断のために必要なあらゆる情報を駆使し、それらの情報を活用できるのは医師のみであり、その行為は医師によってのみ行われる医療行為である。医師でない者(外国の医師免許のみを有する者も含む)が行うことは、日本の法規に違反する行為である。

画像診断も「医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為」であり、医療行為と判断する事に違和感は感じません。ただ、行政からは「画像診断は医療行為である」と公式に回答されているわけではなく、もし裁判等で問題になればケースバイケースで判断されることになると思われます。

「医療行為」自身にも幅があり、ケースバイケースで医療行為か否が判断される事からも、特に患者に対して物理的に直接侵襲を加えないような場合の判断は分かれると思われます。主治医が医用画像を自ら読影し、さらに読影レポートを参照し、その結果を元に最終診断を下す行為は「医療行為」そのものと言えるでしょうが、放射線科医が主治医に画像診断レポートとして報告する行為がそれと同等の「医療行為」とするのは少し違うとも考えられます。ましてや、院外の機関から遠隔画像診断支援サービスとして、主治医への診療・診断支援≒「コンサルテーション」という契約のもとで報告されることも、同じ「医療行為」となるのかといえば、「医療行為」とは考えないという解釈もあり得ると考えます。

そもそも、「遠隔画像診断支援サービス」と銘打ったのは、読影の外部委託かつ医療機関外で読影を行うということから「医療行為」ではなく、主治医への診療・診断支援≒「コンサルテーション」という意味合いを強調するためにつけられた名称といえます。

遠隔画像診断ガイドラインで「画像診断は医療行為である」とされましたが、これによりガイドラインの目的とする遠隔画像診断と既存の医療の枠組みとの間で、不整合な部分が出現する事になります。それらの不整合や問題点については、ガイドライン上に記載はなく、学会などでも具体的に議論になった形跡はないようです。

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