商用サービスである遠隔画像診断支援サービスへの提言

商用サービスである「遠隔画像診断支援サービス」は、依頼施設の主治医の診療・診断に対する支援(≒コンサルテーション)として広く利用されるに至っています。先に述べたようにこれらは衛生検査所における病理レポートと同じ形態をとっています。

医療機関等が読影の外部の委託として「遠隔画像診断支援サービス」を利用することが問題ないことは先に述べましたが、現在の医療制度においては医療機関外で医療行為を行うことができず、営利企業は医療機関を開設できません。そのため画像診断の専門医が読影を行うという実態は医療機関で行われるものと何ら変わりがありませんが、「医療行為」ではなくあくまでも依頼施設の主治医の診療・診断に対する支援(≒コンサルテーション)としての立場を明確化する必要があります。

病理においては病理学会が2015年の「国民のためのよりよい病理診断に向けた行動指針 2015」にて衛生検査所で作成される病理レポートは「医行為」でないと明確に表明したことから、検査所で発行される病理レポートは「病理診断報告書」ではなく「病理検査報告書」と「診断」という文字を使用しない流れになってきています。

繰り返しますが「遠隔画像診断支援サービス」は広く利用され、すでに現在の医療においてなくてはならないもとなっています。遠隔画像診断ガイドラインにおいて、画像診断は医療行為と表明されましたが、商用サービスである遠隔画像診断支援サービスについての言及はありません。すべての遠隔画像診断が医療機関間連携の「医療行為」としての「遠隔画像診断」にすぐさま移行できる状況でないことから、商用サービスである「遠隔画像診断支援サービス」は今後も必要であることは明らかです。

衛生検査所における病理検査報告も同様に現在の医療においてなくてはならないもとなっており、病院や診療所で行われる医療行為である「病理診断」にすぐさま移行できる状況でないことも同様です。

このように同様の状況における病理検査報告と遠隔画像診断支援サービスの違いは、衛生検査所での「病理検査報告」は「非医療行為」とはいえ、衛生検査所への外部委託は法律で定められた施設基準や検査体制を満たし、各都道府県知事に衛生検査所としての登録を認められたもので、政令8業務の一つとなり医療法上も業務委託が明確に規定されています。また業界団体としても一般社団法人衛生検査所協会等が存在し、さらに医療関連サービスを取りまとめた一般財団法人医療関連サービス振興会が設立され、精度管理や事業者認定等を行っています。

一方、遠隔画像診断支援サービス事業は医療法等含めた法律上なにも規定が存在しない状況であり、ようやく業界団体である一般社団法人遠隔画像診断サービス連合会が設立されたばかりです。業界団体独自の事業者が満たすべき基準の提示や事業者認定制度も現時点では存在していません

遠隔画像診断支援サービスが現在の医療制度のなかでの役割を明確にし正式に認められたものとするためには、病理と足並みを揃える意味からも、「医療行為」ではなくあくまでも依頼施設の主治医の診療・診断に対する支援(≒コンサルテーション)としての立場を、各事業者のみならず業界団体からも再度明確にすること、さらには業界団体独自の事業者の基準や認定制度を設け、業界団体内で最低限の質の担保を行う制度を早急に構築することを提言します。

その後に現在の診療報酬制度における画像診断管理加算の施設基準に外部委託の禁止が盛り込まれていることに対し、関連学会等と連携を取りながら対応を検討するべきと考えます。

さらに次のステップにおいては「診療等の著しい影響を与える業務」として法律などで明記された「政令指定業務」や「医療関連サービス」の一員となるべく進むべきか、あるいは各事業者が事業転換を行い、医療機関での遠隔画像診断に移行していくべきかなどを、幅広く議論していく必要があるでしょう。

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