遠隔画像診断における契約 1

遠隔画像診断の仕組みの概略は、検査を実施する医療機関等で発生した医用画像をネットワークを利用して遠隔地の読影医の元に送信し、医用画像を読影した結果をネットワークを介して、検査を実施した医療機関等に返却します。医用画像を発生させる検査の依頼は医療機関の患者の主治医が行います。読影医は遠隔地で読影を行い、主治医宛に読影レポートを返却します。これが主治医への診療・診断の支援サービスの提供にあたります。主治医はそのレポートを参考にして最終診断を下し、患者に説明や治療をおこないます。歴史の項目でも述べたように、直接の対面診療は主治医が行っていますので、医師法第20条上の問題は起こりません。

読影医が一個人として遠隔画像診断を行う場合はどのような契約形態が考えられるでしょうか。一番単純なのは非常勤医として遠隔画像診断を行うパターンです。いままでは医療機関に出向いて読影を行っていたものを、自宅やオフィスに回線と端末を設置し読影を行います。読影システムは病院の読影システムの一端末を設置しても、別個の遠隔画像診断システムを導入しても変わりません。病院とは非常勤医として雇用契約が存在しており、非常勤勤務の給与が病院から支払われます。このような場合は病院に出向いて読影を行うのと何ら変わりません。

 それでは読影医が個人事業主として、あるいは法人を設立して法人として遠隔画像診断を行う場合はどうなるでしょうか。行っていることは同じになりますが、病院との雇用契約は生じない代わりに、病院と読影(遠隔画像診断支援あるいはコンサルティング)に関する業務委託契約を、個人あるいは法人と結ぶことになると思われます。業務委託契約には請負契約や(準)委任契約などの種類がありますが、このあたりは法律的な解釈が難しいのでここでは触れません。

雇用契約か業務委託かの判断は契約書のタイトルでは無く実態に基づいて判断されます。遠隔読影の業務は多くは読影件数に基づいた料金設定であり、病院による指示や拘束時間の指定などが無く、「使用者」と「労働者」というような主従の関係にない独立した事業者間の契約であると考えられるため、労務・税務的には遠隔画像診断を業務委託で行うことは可能と考えて問題ないと思われます。(ちなみに内容が業務委託に近くても雇用契約で行われていることに関しては特に問題はありません。)

よって、病院からは給与ではなく報酬あるいは商取引として、あなた個人にあるいは法人にお金が支払われます。これにより給与所得では認められない必要経費が認められることも遠隔画像診断で独立開業する大きな魅力となっています。ただし、病院の労働者では無いためため、労働基準法は適用されず労災保険等の加入対象にもなりません。超過勤務手当や有給休暇といった概念もありません。すべて自分の責任と言うことになります。

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